学問の小部屋

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ピーク・プログラム・メーター

ピーク・プログラム・メーター(peak programme meter、ピークメーター、ピーク計)とは、その名の通り信号のピークを検知し、プログラム入力(連続入力)を表示するメーターである。以下PPメータと呼称する。PPメータは、元々オープンリールなどの録音レベルの監視に使われていた。VUメータの緩慢な動作ではピークに追従しないという理由から、応答速度が速いPPメータが開発された。VUメータよりも広い-40dB〜+5dBの表示領域が規格化されており、レンジが広いので対数メモリが規定されてる。


最初のPPメータは1938年にBBCによって制定され、現在ポピュラーなdB表示ではなく、等間隔に1〜7の数字で目盛りが切られていた。 規格によれば目盛りは-36dB〜+9dBの45dBをカバーするとされる。(実際の製品ではこれ以上の範囲をカバーするものもある)
PPメータの規格はIEC 60268-10である。この規格番号には三種類のバリエーションが存在している。

規格番号 制定者 目盛り 基準レベル attack time decay time
IEC 60268-10 / I Nordic(DIN) -36, -30, -24, -18, -12, -6, TEST, +6, +9 TEST = 0 dBu 80% in 5 ms 20 dB in 1.5 s
IEC 60268-10 / IIa BBC 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 4 = 0 dBu 80% in 10 ms 24 dB in 2.8 s
IEC 60268-10 / IIb EBU -12, -8, -4, TEST, +4, +8, +12 TEST = 0 dBu 80% in 10 ms 24 dB in 2.8 s
ANSI C 16.5 IEC 60268-17 VU meter -20 dB to +3 dB linear scale 0VU = +4 dBu 99% in 300 ms 99% in 300 ms

実用PPメータ

はじめに述べた通り、PPメータは録音のクリップ監視用に開発された経緯から、機能はソフトウェアレベルモニターやLEDピークランプに継承され、針式メータは役割を終えている。録音機器のレベル監視は液晶表示やLEDで残っているが、放送機器ではどちらかといえばピークよりも平均レベルの監視の方が重要である。
現在の総務省令では放送事業者にラウドネス値の管理が義務付けられており、過去によく話題になったCMになると突然音が大きくなるといったクレームを防ぐよう、均一のラウドネス値で送出するようになっている。
組み込み機器では、最終出力にディジタル出力によるハードリミッター(ハードコンプレッサ)機能を挿入し、定格よりも無意味に出力レベルが大きくなり歪み増大、スピーカの破損を引き起こす危険性を取り除けるようにする。このとき、瞬間的な大電力を防げるように、信号のrms値でなくピーク値を閾値検出する方がより安全である。このように、ユーザーに見えないところでピーク監視技術は残っている。

鑑賞用PPメータ

1980年頃の一部のパワーアンプには、直視型PPメータ兼ワットメータが搭載されていたが、鑑賞性が高いVUメータに置き換わった。その後LEDが登場し、当初はLEDが物珍しかったので高額機器に競ってLEDメータが搭載された。その後LEDが安価となると、今度は逆に高価になってしまった針式VUメータが高額機器に搭載されるようになった。VUメータとPPメータを並べて動作させると、PPメータは動きがせわしなく、あまり鑑賞に向かないことがよくわかる。

PPメータの実例

TEAC AP-500


TEAC AP-500は、JIS規格最大の11形のメータを装備しているメーターユニットである。元はオープンリールの録アクセサリという位置づけのようである。メータはヤマキ製の11形正規PPメータで、JIS規格を満たす。当時コスモというメーカーから似た製品が出ていたらしい。本製品のメーターアンプは小松ラジオという会社のOEMで、コスモから小松ラジオに移籍したエンジニアが設計したらしい。

パワーアンプ Technics SE-A3

PPメータの応答速度は公称100usが多いのに対して、Technicsのパワーアンプ SE-A1とSE-A3、SE-A3Mk2(SE-A3MkII)は50usの応答速度のPPメータが搭載されている。A1は-50dB〜+10dBと少しレンジが狭く、A3は-60dB〜+5dBとより広帯域である。最近復活したTechnics SE-R1には過去のパワーアンプのデザインを踏襲した針式メータが付属しており、表示レンジはSE-A3と同じであるが、これはアベレージパワーメータのようである。

市販オーディオ機器ではこれらが挙げられるほか、計測器では 横河電機 熱電対形電流計 2016 がMHzまで応答するアナログメータとして販売されている。