学問の小部屋

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VUメータ

VUメータは信号レベルの変化を針の動きで示す計測機器である。1939年にUSAのベル研究所CBSNBCによって、電話回線信号の音量感をモニターするために開発された。VUとはvolume unitの略で、0VU = 1.228V (= +4 dBm)である。VUメータは、内部インピーダンス3.6kΩのメータに直列に3.9kΩを接続したものを600Ω負荷に並列に組み込んだとき、 1.228Vの1kHzサイン波を入力した場合に1mW消費して300msで0VUを指し示し、その振れ角の精度は+-1%以下でなければならない。針式メータはその精度によりクラス分けされていて、1級、1.5級などとJIS規格で規定されている。○○級であればフルスケールを指したときの誤差が○○%以下であることを意味している。

VUメータの規格

BTSという古い規格が持ち出されることが多いが、BTS規格は2001年に廃止され、現在はJIS規格に内容が継承されている。内容は、1954年改訂のBTS規格5703が最新のようである。海外の規格ではANSI C16.5-1942, British Standard BS 6840, IEC 60268-17 がある。BTS規格の内容を以下に引用する。

VUメータを定義する。VUメータは特性インピーダンス600Ωの系に使用する。 メータは支持部と抵抗器で構成される。メータには整流回路が内蔵される。内部インピーダンス3.9kΩの表示部に直列に3.6kΩの抵抗を付加し、メータは600Ω負荷に並列に挿入する。 (BTS規格では抵抗器まで含めてVUメータと呼称するのに対してJIS規格ではメータ本体のみをVUメータとする。)
1.228Vの1kHzサイン波を入力した場合に0VUを指し示し、0.27〜0.33sの範囲で99%に達すること。 その振れ角の振れ過ぎ角度は1〜1.5%の範囲にあること。本体の1kHzでのインピーダンスは3.9kΩとし、誤差は+-200Ω、35Hz〜10000Hzでは1kHzの値を基準として+-15%であること。本体の使用電力は1W以下とする。BTS規格で制定するメータの大きさは11形、8形、6形の三種類とする。
"VU"の"U"の位置は目盛り角度の64%以上とする。目盛り板の色はクリーム色(色相7、明度19、彩度2〜3)とする。 文字色は0〜+3の数字と目盛り線、弧は赤、その他の部分は黒とする。JIS規格では特に必要な場合はこの限りでないとされる。指針の形状はつや消し黒色のスペード針とする。 パネルに4か所の取り付け点で同一平面上で固定できるものとする。 平面度は3点を含む取り付け平面と他の一点との間隙は0.5mm以下とする。
照明は2号ランプのガラスを艶消しにしたものとする。計器をパネルに取り付けた状態でランプを容易に取り外しできるように外箱のふたは表面から取り外し、取り付けができること。

規格の補足

電球の使用が規格化されているのは時代を感じさせる。
特性について以下に補足すると、磁気回路がパネル素材の影響を受ける以上メータ特性は変化する。BTS規格では鉄、非鉄パネルの区別は特に設けない。 JIS規格では鉄、非鉄、共用をそれぞれF、A、FAと区別する。規格書によると扇形に振れる必要があるように見えるが、ラベルは振れ角に対してリニアスケールとなるよう目盛りが切られていればよく(-6dBが-∞と0dBの中点に配置される)、正当なVUメータには水平や垂直に振れる横振れ型(縦振れ型)メータもある。終戦直後の頃にNHKで使用されていた横河電機製VUメータは、電流感度50uAであったそうである。規格改訂前の製品であったのかもしれない。

VUメータの欠点

VUメータは信号レベルに追従するメータといっても、ラウドネス特性などは考慮されておらず、応答速度の遅いアベレージメータであるから、その振れ方は聴覚上の印象をそのままは表さない。また下限が-20dBまでしかないので、それ以下の信号にはメータは全然反応しない。応答速度が遅ければ、瞬間的なピークを捉えることはできない。このような理由から、VUメータだけで信号をモニターするのは現実的でなく、アナログ時代はPPメータやLEDバーメータ、現在はソフトウェアによるrms検出、ピーク検出、ラウドネス検出が信号モニターに使用される。

VUメーター・ドライブ・アンプ

正規VUメータは、3.6kΩの抵抗を直列に繋げたメータを600Ω伝送系に接続すれば動作することになっている。出力インピーダンス0Ω(つまり、定電圧駆動のオーディオパワーアンプ)に3.9kΩの抵抗とメータを直列に繋げばよい。複数のメータを並列に接続してドライブするときは、トータルインピーダンスがアンプの定格を下回らないように気をつければ、規定回路定数での動作が可能である。

電流計をVUメータの代用にする方法

そもそもVUメータの第一の定義とは、「1.228Vのサイン波を入力したときに300msで0VUを示すメータ」であった。VUメータはフルスケールで+3dBを指し示すから、+3dBまで振らせるにはルート2倍した1.736Vを入力してやればよい。 内部インピーダンスは3.9kΩと決まっているので、外部抵抗の3.6kΩを付加したときの電流値はオームの法則に従い231.47uAとなる。即ちVUメータとは機械的精度で時定数を調整した電流感度230uAの交流電流計である。よって、定格250uA程度の交流電流計を用意して外部回路で時定数を調節すれば、正規VUメータに近い振れ方となる。

VUメータの実例



写真はヤマキ電気製の正規VUメータ FYR-11L と自作VUメーターボックス"KVU-11L"である。19インチラックマウント3Uサイズのブランクパネルを加工してFYR-11Lを配置し、2mm厚のアルミ板を折り曲げ加工してボックス化した。


次の写真はヤマハのミキサーから取り出した組み込み用VUメータである。このようなVUメータは単にVU目盛りのラジケータ(ラジオ・インジケータの略。)で、外部回路で特性を作り出していることが多い。

参考サイト

Sifam Instruments ltd

SIFAM(サイファム)はVUメータの国際的なリファレンスとなるVUメータを製造しているイギリスのメーカーである。 JIS規格準拠ではなく、採用している規格はABS 6840:Part 17 1991 ,IEC268 - 17:1990 である。 JIS規格がスペード針を規格化しているのに対し、こちらはソード型(先細りしている針)を採用している。 正規VUメータとしてClarity, Clarity Focus,Director,Monitorという四種類が規定されている。
注目すべきはBBC規格準拠のPPメータも製造していることで、このメータはSIFAM製以外で入手することは非常に難しい。