学問の小部屋

ここは学問の黒板です。

地球温暖化の一般論

さて、あまり長い間黒板を放っておくと誰かが落書きに使うかもしれない。
この時期は修士一年はみんな修羅場であるから、同じような境遇の輩はあまり書けないことが多いだろう。
よりによって今回は一般論シリーズである。

おそらく一般市民の理解から入ると二酸化炭素が温暖化の単一原因だ!というところから始まる。
北極の氷が溶けると水位が上昇するという。これが本当かどうかは、中学レベルの理科がわかっていればすぐに解決するはずである。アルキメデスの原理を思い出せばよい。残念なことに、鹿島勇の見たところ、NHK以外のテレビ局でこの第一段階を抜け出している局は存在しなかった。

さて、次にこのサイトを参照されたい。
http://www.chironoworks.com/ragnarok/psychology/log/eid38.html

読者が読んだことを前提にして、リンク先の内容を簡単にまとめると

  • 地球温暖化二酸化炭素のせいだとする議論の根拠は定性的な三段論法に依存する。
  • しかし、実際は温室効果ガスとしての寄与は二酸化炭素よりも水蒸気の方がずっと高い。
  • しかも、自然に排出される二酸化炭素の量に比べて人類が排出している量は微々たるものである。
  • よって、人為的な二酸化炭素が温暖化の原因だ!というのは間違いである。

この話を全く知らない読者は驚いたかもしれない。
温暖化には太陽活動の変化などの影響があるとも考えられており、どちらの寄与が大きいかという議論は決着がついていない。
また、近年環境学者が「地球シミュレータ」というスーパーコンピュータが二酸化炭素濃度の影響をシミュレーションして未来予測を行ったことがある。その結果は現在の排出制限の論拠ともなっている。これが妥当な結果だったかといえば、実はかなり疑問なのである。
というのは、地球シミュレータは超高性能な計算機で演算の信頼性が低いということではない。地球を完全にシミュレーションして未来を予測するためには、初期条件として地球上のすべての地点の気温や海流などのパラメータを人間が入力しなければならない。大気の循環を考えるのならば、高度一万mくらいまでの空気の密度分布、温度分布等の情報も逐一入力する必要がある。ちなみに赤道部の円周は4万kmであり、地球半径は6400kmである。当然地熱も考える必要があるだろうから、地球内部の情報も必要に鳴る。
しかし、そのような精密で膨大な観測データはまだ存在しない。ということはある程度人間が見積もりを立てて勝手なパラメータを入れてやる必要がどうしても出てくる。これは気象予測に限らず、物理学のすべてのシミュレーション研究に言えることで、どうしても得られない情報についてはある程度恣意性が残ってしまうのである。
そのような勝手な初期条件から計算した結果、未来の地球の確実な姿が予想できるかといえば、天気予報が当たる確率を考えればその信頼性は明らかだろう。
残念ながら、まだ人間は地球の未来を予測するほどのデータと計算能力を手に入れていないのである。
そのような状態で、地球シミュレータの計算結果を論拠として二酸化炭素が原因だとしてしまうのは、支持を得られなくても仕方ないということになる。

ただし、現在確かに地球温暖化は進行しており、北極の氷は溶け出している。反対に南極の氷は厚さを増している。南極も温度自体は上がっているが、仮に平均温度が3℃上昇して-50℃が-47℃になったところで氷が溶けることはない。
もちろん南極の周辺部は氷が溶けるだろうが中央部にそれ以上に水蒸気が運ばれて雪が大量に降り、トータルでは氷の量が増えているのである。液体の水の総量はおそらく大して変化していない。

さて、ここまでの流れは非常に論理的であるように見えて、実は大きな見落としが存在する。
それは北極の氷が溶けようが溶けまいが、地球温暖化が起これば海水面は上昇するということである。
これも本当ならば中学理科レベルで理解できる。水の質量は変わらないとしても、温度が上がれば熱膨張により体積が増加する。
海水面が上昇すると南洋の島々が水没して・・・とか、よく聞く危機は実際に起こることになる。

ここまで踏まえてやっと議論の土台に立てるのである。
情けないことに、こんな簡単な議論も踏まえていない報道が多すぎるようである。

さて、今回の議論で鹿島勇が書きたかったことは・・・

地球温暖化は人為的な二酸化炭素のせいとはまだ結論付けられない。むしろ人為的な原因とする根拠は乏しい。よって二酸化炭素を排出制限することにより途上国の経済発展が妨げられるとすれば、それは人類全体にとってデメリットの方が大きいかもしれない。今から二酸化炭素排出量を抑制するよりも、短期的には排出量が増えるかもしれないが積極的に環境技術の開発を行っていく方がよいと鹿島勇は考える。むしろ問題なのはエネルギー資源をどんどん使ってしまうことである。
また、温暖化は地球全体のバイオリズムの結果とでも書くべきか、ある意味で自然現象ではないかと考えている。過去には地球全体が氷河で覆われるスノーボール現象もあった(アイスアルベドフィードバック)し、地球全体の気温が上下することなんて数千万年、数億年のレベルで考えれば何度でも起こっている。その時期がちょうど今にさしかかっているだけかもしれない。まだまだ、地球ほどマクロな複雑系決定論的に記述するには人間の科学は及ばないのである。

ではこれは自然現象だから諦めよう、というのではなくて、水位の上昇は避けられないだろうからそれに備えて何らかの対策を研究することが排出抑制よりもよりよい選択ではないだろうかと考える。
環境学者の皆さんには、「これからどうすればよいのか」について考えて頂きたい。

本来の周期からいけばそろそろ氷河期に入る時期である。もし数十年以内に平均気温が低下に転じて「地球寒冷化」で大騒ぎするような時代がまたやってきたら(数十年前はそういう議論が主流だった)、読者各位はどう考えるだろうか。

2009.0920追記:
その後調査したところ、本文で提示したいくつかの疑問についてはすでに環境省のサイトなどで解決しているようである。しかし、疑問が残っているのは事実であり、以後さらに調査を継続する。