学問の小部屋

ここは学問の黒板です。

ディスクプレーヤ

かつて音楽再生の主流であったCDプレーヤは主役の座を降り、すでにディスク再生よりもポータブル、ストリーミング再生の方が主流となった。市民の関心もオーディオより映像、ネットコンテンツに移った。過去にはオーディオ業界が先導したニセ科学的な謳い文句が跳梁跋扈しており、本ページの元ページにも多数説明を掲載していたが、ディスク再生自体が下火となったことで、内容を吟味して掲載し直すことにした。

カニック(ドライブモーター、ピックアップ、レンズ等読み取り系)

レコードプレーヤやカセットテープデッキでは、 直接針を支えるアームの品質、ヘッド、ターンテーブルの慣性モーメント、モータードライブの均一性、土台の安定性等は大きく信号品質に影響する。CD黎明期にはスイングアームを売りにしたメーカー(Marantz CD-34など)や、ガラスピックアップレンズを売りにしたもの(日立lo-D DAD-800など)もあった。特に高額な製品でなくても、サーボ技術により正確な読み取りが可能である。サーボ設計が悪く読み取りに失敗するような機種はそもそも欠陥品である。現在では、メカニックを気にするのはピックアップユニットのメーカー程度である。
なお、デジタル出力のみのCDプレーヤのことをCDトランスポートと呼ぶ。かつて、CDプレーヤにディジタル出力がつき始めた頃はデジタル伝送モジュールの値段がきわめて高く、コストダウンを目的としてアナログ回路部を省いたトランスポートが発売された。

ピックアップサーボの影響?

CDプレーヤではモータでディスクを回転させている。サーボモータが余計なノイズを生じ、信号に影響するという話がある。
また、サーボ電流を測定した記事などを見ることができる。 サーボ電流は可聴域の周波数に成分を持ち、CDR盤の種類などにより差を生じているように見える。しかし、これはサーボ電流を測定したのであって、アナログ音声出力信号を測定したのではない
ことである。サーボモータによるノイズが出ているというのならば、音声信号に乗っているノイズが観測できていないとおかしい。グラウンドレベル変動に影響があるとしても、信号線とグラウンドの相対的レベル変動は音声信号のノイズとして観測できるはずである。これらを考慮したサーボの影響を示している実験結果は、寡聞にして知らない。

クロックにおけるジッタ問題

デジタル信号を搬送するクロック信号の時間的な揺らぎはジッタと呼ばれる問題である。高周波伝送では非常に問題になる。ジッタの発生源には二種類あり、ディスクの偏芯や回転ムラにより発生する読み取り系ののジッタと、伝送クロックのジッタである。
カニックや光学系による読み取り段階のジッタは、トラックバッファメモリの介在により必ず非同期クロックで後段に送られるので、そもそも音声信号に影響は出ない。
バッファメモリに蓄えられたPCM信号は、その後そのまま基板上でDACに渡すときはI2S規格、外部機器に出力するときはSPDIF規格に変換されて出力される。I2S規格の場合、入力されたクロックを元にして作られた高速クロックを使用したデルタシグマ変調によりアナログ化されるので、出音に対して入力クロックの影響が原理的に出る。
伝送系のジッターによる影響は、アナログ音声信号の位相雑音で評価できる。通常のSNRの測定法(1kHzトーンと、それ以外の成分の比)で構わない。一般に、聴覚上十分なSNRの基準は、'常に'14bit相当が確保できるかである。

なお、信号線の引き回しが数十mに及ぶような業務用機器では、マスタークロックジェネレータを使いワードシンク信号で各機材を同期するが、同期動作が必要な多数の機材を使用するときの工夫で、プレーヤ->DACの直列接続の構成では意味がない。

LD

LDの映像はアナログ・コンポジットで記録されており、経年劣化を起こすので、LDでしかリリースされていない映像ソフトは早期にアーカイブすることが望まれる。
映像を高精度に出力するには、ダイレクトコンポジット出力を備えている機種で再生する。
映像処理はフルアナログなので、ディスク走行系の安定性などがピックアップの読み取り精度に直結し、映像S/Nなどのスペックに直結する。
音声はリニアPCMまたはドルビーデジタルなので、回路系の影響を受けずにアーカイブ可能である。
kazimaはLD最高機種のHLD-X0を記念碑として確保したが、そもそもLD世代ではないので、アーカイブの機会がない。

Laserdisc UK Web Site
イギリスのLDアーカイブサイト。ありとあらゆるLDデッキのデータベースとなっている。

VHS/S-VHS

かつて「家庭用ビデオ」といえばVHSのことを指したが、ディジタル放送への移行により家庭からテープメディアが駆逐された。記録映像には標準、3倍、5倍など様々なモードがあるので、発掘された古いテープの再生を試みるときは、適切なデッキを探す必要がある。
映像はY/C分離した状態で記録されているので、迷わずS端子で出力すればよい。映像のアナログテープ記録・再生の品質は、ほとんど磁気ヘッドの周波数特性で決まっている。VHS系最高・最後の規格であるD-VHSに対応したデッキは、ヘッドの周波数特性の観点からいって、VHS,S-VHSの過去のデッキよりも優れている。かつてデッキ本体を重くしてテープの走行揺れを抑えるなどの工夫をアピールしていた機種もあり、まったく意味のない工夫ではないが、ヘッドの性能と比較すると微々たる差でしかない。
以上から、VHS系テープの再生には、D-VHS最終機種のVictor HM-DHX2を使用することが望ましい。
デジタルハイビジョンビデオ 「HM-DHX2」

DAT

DATテープは、放送波のフォーマットに合わせた48kHzfs 16bitを採用しており、業務用として普及していた。著作権管理のの関係で44.1kHzでのディジタル録音はできず、 CMOSコピーガードにより一世代のみのコピーが許されるなどとされていた。(その後SCMSコピーガードは無視されるようになった)

SONY SDT-9000 DDS改造品

SONYのDDSドライブにオーディオDAT用のファームウェアを入れたもの。コネクタはSCSIの50pinを使用しており、PCへの接続を前提としている。パイオニアのHSモード(96kHz fsモード)やTASCAMの24bitモード、倍速取り込みにも対応という万能のDATデッキである。SCSI-USB変換ケーブルにより、USB接続でPCに取り込める。エラー検知が厳しく状態の悪いDATテープの取り込みには向かないが、波形編集ソフトウェアでドロップアウトの補正程度は簡単にできる。
SONY SDT-9000でオーディオDATテープを読む

MD

ディスクに光磁気記録方式を採用することで堅牢性を確保し、ディスク一枚の容量は230MBに対してATRAC3という音声信号圧縮技術でポータブルの一時代を築いた。ポータブル視聴はスマートフォンに移行しており、すでに媒体としての役割を終えている。SONYHi-MD仕様品のMZ-RH1はUSBでPCに接続してディジタル信号のまま高速読み出しが可能であるから、過去の資産を無劣化でアーカイブ可能である。
Net-MD