学問の小部屋

ここは学問の黒板です。

REGZA&ESSP

この一連の記事では、AV(オーディオ・ヴィジュアル)研究について述べる。
kazimaは大学で基礎物理学を専攻し、かつて組み込み音声信号処理のプロとして活動しており、現在も大学で音響物理学を研究する立場である。基礎物理学徒として、音響物理学徒として、またAV機器の元プロ、現ディジタル信号処理のプロの立場から、伝統的にオカルトまがいの話題が尽きないオーディオ業界における見解を述べる。

視聴覚室の構成

未記入の記事を含め、各記事は以下のキーワード群で構成されている。

  • マイクロホン
  • ディジタル信号処理

ADC、DAC、ディジタルイコライザ、クロスオーバー、立体音響等

  • アナログ回路

信号伝送、アナログイコライザ、ケーブル等

定電圧駆動アンプ、電流駆動アンプ、MFBアンプ等

  • スピーカー

能率、周波数音圧特性、周波数位相特性、歪み、内部損失、音像定位等

  • カーオーディオ

カーオーディオ特有の要素、実例等

  • モバイルオーディオ

モバイルオーディオ特有の要素

  • 騒音制御

遮音、吸音、エコーキャンセル等

  • メーター

VUメータ、PPメータ、パワーメータ等

原音と再生音

ホールでの音圧や迫力を再現するにはホール並の大きさのリスニングルームと反響設備が必要である。 そもそも、空気の振動は完全にはマイクで電気信号に変換されない。しかし、"まるで原音再生ができているような感覚"を味わうことはできる。 現場で体験する本物よりも”リアルな”音や映像を作り込めば、あたかもその場にいるような気分になれる。それは「再生芸術」という古い言葉で呼ばれるが、これは大昔のオーディオマニアの造語であって、 自宅のステレオを弄る行為にkazimaは芸術性を見出すことはない。
コンサートホールで得られる情報は当然音だけではない。臨場感とは単に楽音の音質だけではなく、客席に座ればその椅子の座り心地や匂いもある。 また必ずと言ってよいほどホールでは誰かが咳をしている。ホールの空間による視覚的距離感、 何より目の前で音楽家や役者が演奏、演技している様子という視覚的イメージは非常に大切である。音楽家が観客に提供するのは音だけではない。例えば弦楽器奏者が運弓をパート内で揃えるのには音響的意味合いと視覚的意味合いの両方が含まれている。激しい体の動きで音にも激しい印象を与えるといったことまで演奏家は考えている。実際にオーケストラの中で演奏したことのある身からすれば、再生音楽では現場の雰囲気は半分も伝わらないと感じる。
ただし、「その場にいること」と「臨場感」は必ずしも一致しない。市販ソフトは必ずマスタリング工程を経てユーザーの手元に届く。現在の音楽業界では、96kHz24bit以上、環境によっては192kHz32bit floatといった環境を使用する。ビット数は直接ダイナミックレンジを表すので、 CDにプレスされる段階でダイナミックレンジは圧縮される。マスタリングによって必ず信号劣化は起こるが、同時に現実の再生環境を反映した調整が入るので、ホームオーディオ、CDラジオ、カーオーディオといった不完全な視聴環境でも良好な結果が得られるようになる。このように、原音と再生音には厳然たる隔たりがある。
なお科学技術研究として、境界要素法による音場再現というテーマがあり、大量のマイクとスピーカ、DSPによる伝達関数補正により元音場を再現する試みであるが、装置がきわめて大掛かりになる上に厳密な運用は難しく、現在再現できているのは2kHz以下の領域である。

このページのスタンス

kazimaの趣味は「AV機器を科学的に考え、そこにある物理学や工学技術を学び楽しむこと」と「音楽鑑賞、製作」であり、オーディオ機器の音質と呼ばれるものには関心がない。どんな機器を使っても音さえ出れば音楽は楽しめる。よって、日本の一般的な視聴環境(六畳間、八畳間など)ではどのような機器を選ぶのが物理的、経済的、心理的に妥当であるかを研究し、提案する。
音楽は日々の生活の心の糧であり、再生機器に振り回されていては本末転倒である。 しかしながら、少し頭を使って配置や小物選びをする方がよい結果を生むことは多い。そのために少し科学の力を借りることで読者各位がよりよい視聴環境を実現できるとすれば本望である。

外部の有用なサイトへのリンク

オーディオの科学
学問の小部屋とモットーをほぼ同じくする、「オーディオの科学」著者の志賀正幸氏は元磁性物理学者である。
東京電機大学音響信号処理研究室
金田教授は音響インパルス応答研究の専門家である。技術講習会の資料が入手できる。
岡山理科大学澤見研究室
岡山理科大学の澤見教授は計測器の歴史に精通しており、ユニークな視点からの計測結果を提示している。
創造の館
趣味のカテゴリの音楽苦楽部にて、オーディオ機器の実態をよく分析した記事が掲載されている。

株式会社遊音工房
代表の人見氏は元半導体技術者で、ユニークなスピーカ構築を事業化している。