学問の小部屋

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スピーカの選び方

今回は言論タグにてスピーカの買い方を論じる。
一般家庭において、スピーカを選ぶのは簡単である。はじめに許容される床面積を決めておき、店頭でこれはと思ったスピーカを買えばよい。
現在市販されているスピーカは、どれもこれも不完全な代物であり、音を出すという意味で完璧なスピーカは存在しない。また、音という目に見えないものを相手にする以上、スピーカはできるだけ小さい方が好まれるものの、低音をしっかり出そうとすると、動作原理的に巨大なスピーカが必要となる二律背反が存在する。可聴域の最低音まで再生するには、30cmや38cm口径のウーファでは到底足りない。まずこのことを理解しないと、聞こえている低音がホンモノか(狙い通りの音になっているか)の判断ができない。
また、口コミを参照するのは危険である。人によって「高音」「低音」の定義は異なり、低音がよく出る、高音がよく出るといった意見はちっとも参考にならない。口コミで唯一参考になるのは、ある機種と比較して高音が、低音がという相対比較のみである。
人によっては、10cm径ウーファを使うことに大きいと驚くかもしれないし、逆もありえる。
デスクトップスピーカを探している人にフロア型スピーカを薦めても意味がなく、PA用スピーカを求める人にブックシェルフを薦めてもやはり意味が無い。使う場所、目的、許容スペースによってベストなスピーカは変わる。
スピーカに興味を持って量販店に行くと、実に様々な値段、形、大きさのスピーカが置いてあり、それぞれ音を聞いてみると、確かに高級機と呼ばれる製品群はいい音がすると感じがちである。
ところが、「高級機」の中には意外と小さいものがあったり、必ずしも値段が高い方がいい音がすると感じないことにすぐに気づく。また、落ち着いて周りを見渡すと、安い製品で似た大きさのスピーカは騒がしい販売フロアに置いてあって、「高級機」だけが一歩離れた静かな場所に展示してあることがわかる。
それでは、安い製品を「高級機」のフロアに持ってきて、切り替え比較したらどうなるか?そのようなことは決して販売店ではさせてもらえない。もし実行したら、「高級機」よりも音がよいと感じる安い製品が大量に見つかるからである。
今の時代、可聴域の上限の20kHzまで再生できるスピーカはいくらでもある。あとはウーファの大きさとf0に依存する低域がどこまで伸びているかと、構造に依存する音色(これは議論が難しい)の好みであって、低域はサブウーファを追加すれば補うことができ、音色は完全に好みなので高いほどよいなどとはとても言えない。
これでは販売店は商売上がったりなので、「高級機」をそれらしい静かなフロアへ集め、安い製品を含め、どれが売れても利益が出るように配置する。
故に、店頭では正しい比較試聴はできない。音についての予備知識があれば、実はカタログ上で選ぶことも可能である。店頭での試聴が意味をもつのは、想定する床面積とウーファ口径から絞られた候補を選択し、実際におかしなところがないか聴いてみるとき程度である。
参考までに、いくつかのシチュエーションでの推奨構成を提示しておく。

  • デスクトップスピーカ

ウーファの口径は大きくても10cmまで、スピーカの幅15cmにもなるとかなり圧迫感があり、より小さい8cm径程度のウーファを採用しているモデルがよい。(ヤマハ NX-50、creative T10など)また、このサイズでもフルレンジスピーカでは10kHz以上の高音をまともに出せないので、2wayの製品が望ましい。

  • TVサイドスピーカ

TVの音質を向上させようと、両脇にスピーカを置く場合がある。
このとき、TVの大きさに対してあまりに大きなスピーカを用意するとアンバランスとなり、TV視聴に違和感が出る。スピーカの幅はどれほど大きくてもTVの幅の1/2以下、TVラックに置く場合はデスクトップスピーカと似たような解になる。サウンドバータイプのスピーカも悪くはないが、口径が小さくなり値段が上がる上に音像が下がるので、独立2chスピーカを用意できるならその方がよい。

  • 音楽鑑賞用スピーカ

許容スペースに応じて、できるだけ大きいウーファを用意する。ツィータの高さと頭の高さが合うように調節すること、さらにツィータの向きが正面に向くように設置することが大切である。また、スピーカの設置と家具の置き方で平行壁をできるだけ作らないようにして、定在波を抑制する。市販品の場合、どのスピーカも正面での音質しか保証しない。スピーカの性能を活かしたければ、最低限それだけの設置の工夫は必要である。

今回はスピーカの選び方について、改めて簡単にまとめた。