学問の小部屋

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布団のメンテナンス

一般的に布団は干して柔らかさを維持すると考えられており、それ以外の処置は表面のカバーを取り替えるくらいのことしかしない。しかし、これだけでは根本的に解決できないことがある。
布団を干すのは内部の繊維に染みとおった水分を天日に晒して蒸発させ、ふっくらとした柔らかさを取り戻すために行う。また、ダニなどの繁殖を防ぐために日光による追い出しを行うことが目的である。
元々布団に染みこんでしまう水分の正体は使用者の汗なので、様々な老廃物が含まれておりこれは雑菌やダニの餌となる。布団のダニ、ダニ糞の分布は布団表面が中心的であるが当然内部にもダニは存在する。天日に干すと、表面は殺菌されてダニの死骸と糞が表面に残り、生き残ったダニは内部に逃げるか布団外に出る。よって、布団を叩くと内部のダニ、ダニ糞をホコリと一緒に布団から追い出すことができるが、内部からたたき出したいダニ類は奥から表面付近に移動するだけで、当然全部は追い出せない。そもそも叩くことで内部の繊維を砕いてしまうため、ここで出るホコリは綿材の破片であるから本来は叩く意味が無い。布団を干すときは一切叩かず、取り込んでから表面に掃除機をかけると、繊維を砕かずに表面付近のダニの死骸や糞を除去できるため有用である。また、ダニの餌となる老廃物は汗の他にも皮脂やフケが該当するので、これらを布団にばらまきたくなければ、枕の上、上半身部分や掛け布団の顔に近いところにはタオルケットなどでカバーを行って、それだけは毎日取り替えるとよい。(これらの内容については専門家による研究が行われており、枕のダニの数が測定されている)
布団干しはメンテナンスに有効な方法であるが、それだけではダメである。布団に染み込む汗の主成分は水分と塩分であり、水分は干せば蒸発するが塩分は抜けない。長年使い込んだ布団は内部の塩分量が多いため水分が抜けにくくなり、干してもふっくらしない布団になっていく。これを防ぐためには布団の丸洗いが必要である。布団は丸洗いすると内部のダニ、ダニ糞、塩分はほぼ完璧に追い出すことができ、その後干せばもっとも新品に近い状態となる。
ところが、残念なことに布団の丸洗いは大物で手間がかかるため、専用業者に依頼しても一枚一万円程度かかることが多い。これでは毎年布団を全部クリーニングに出すのは難しい。自前で大型洗濯機を買い込むのも現実的でない。よって、布団の値段や品質、メンテナンス費用のバランスをとって、メンテナンス費用がかかりすぎるのであれば定期的に布団を買い換えるのも手である。特に、昔の綿布団は無意味に綿が詰まっており重いだけのものも多く、丸洗いまで含めたメンテナンスを施すほどのものでないこともあるので、そのあたりは布団の基礎知識をつけて取捨選択すべきである。

  • 追記

布団を干したときの独特の香ばしい匂いは、よく太陽の匂いなどと言われる。実際は布団の汚れが分解された匂いなので、あまり好んで嗅ぐものでもない。