学問の小部屋

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技術者の現状 その2

前回
http://d.hatena.ne.jp/kazima/20100708
にて、現代の技術者はどういうものかを述べた。
もう少し補足して、予告した内容を書くこととする。

技術者の売りはもちろん技術を持っていることにある。素人にはできないことをやってのけるからプロの技術者なのである。
しかし、分野移動が頻繁にあり、さらに大きな製品開発のごく一部を担当するようになると、そこで繰り返されるのは専門的な単純作業である可能性が高くなる。ある程度の期間をひとつのことに費やすと、当然作業はうまくなるし、そうでないとやっていけない。すなわち、ほとんどの技術的な仕事は少し練習すればできることばかりである。

このような状況が引き起こすのは、いわば技術者の均質化である。優秀な人材を採ってもやらせるのは結局単純作業の連続になってしまい、多少の期間の長短はあれどマスターすれば誰がやっても結果は同じになってしまう。これでは技術者にとって面白みがないが、経営者にとっては安定した品質を実現するためにこんなに都合の良いことはない。経営者が企業を動かしている以上、技術者の均質化はますます進むことになる。

それでは、そんな中でどうやって技術者は世の中を渡っていくのか。優れた技術者になるためには、手元でやっている仕事以外に自分から進んで勉強し、知見を広めることである。すなわち、均質化した人材プールの中から飛び出せるくらいの能力を仕事以外のところで見つけるのである。多くの技術者はそれをしないので、経営者に言われるままに異動を行い、単純作業を続けてそのうち技術に興味を失っていく。ただ給料を得るためだけに手先を貸しているだけとなり、エンジニアというよりもテクニシャンと化していく。それは、自分の興味よりも何よりも給料がないと生きていけないからで、テクニシャンでもいいと無意識に考えてしまうのである。一人ひとりの技術者と話すとやはりそれなりに面白いことをやりたいと考えている人は多いが、それを実行できている人は少なく、均質化してしまっている人がほとんどである。
仮に今すぐ面白いことができなくとも勉強することはできる。真っ当な勉強はその分野への扉を開く。自分がテクニシャンであると嘆く前にやるべきことはいくらでもありそうである。

次回は、それではどのように勉強し、その成果を証明することができるのかについて考える。<余談>
最近なぜか「飯田物理学」で検索してくるアクセスが多い。
学問の小部屋ではアレについては過去に一言書いたことがあるだけで何の情報もないのに、google検索でトップ付近にくるのが悲しい。