学問の小部屋

ここは学問の黒板です。

エデンの電算機

ここ数日話題の民主党事業仕分けによる「京速計算機」計画凍結について。

「政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は13日午前、10年度予算概算要求の無駄を洗い出す事業仕分け3日目の作業を行い、文部科学省が進める次世代スーパーコンピューター開発事業について「限りなく予算計上見送りに近い縮減」を求めた。」

という。
少し前までスーパーコンピュータを毎日使っていた身からするとこのニュースを聞いたときにはひどく驚いたし、仕分け人の金田教授(計算機科学の専門家)や松井教授(惑星科学)も予算削減を支持したと聞いて更に驚いた。

この分野は常に走り続けなければならない分野なので、世界一かどうかはともかく高性能な電算機を開発し続けることは、真に科学技術で生きていこうとする国には必要なことである。

・・・と、このニュースだけを聞けば政府批判の言葉しか浮かんでこないであろう。しかし、ニコニコ動画に上がっていた実況中継を通して聴いてみたところ、批判するような判断にはならない。

仕分け会議を通して文科省の説明は終始「世界一をめざす」「基礎科学はすぐ役に立たなくても大切、夢がある」という内容だけにとどまり、経理や事業監査が甘かった部分についての反省、以後につながる前向きなアピールもなかった。国家プロジェクトとして最先端の電算機をつくる場合、やはり「世界一」ということは嫌がおうにも意識するものである。しかし、今回の事業仕分け会議で議論すべきだったのは、計画の経理面での健全性や計画が右往左往したことに対する明確な説明であった。そしてそのような内容はほとんどなかった。
理研文科省の説明内容では金田教授や松井教授が削減に投票するのもやむなし、ということである。
当然ながら、この二人が真に電算機の発展を止めようと思っているわけではないであろう。今回の会議の説明に対しての評価を正直に行うと、もし鹿島勇が現場にいて投票したとしても、「削減」という回答を出した。それほどに文科省の説明はダメであった。

今回の一連の事業仕分けについては、官僚の答弁を聞くに今までいかに国家予算がいい加減に使われてきたかがよくわかる。大学や公共団体が経済的に逼迫しているとはいっても、まずは従来のプロセスで潤沢な資金を得る部署がひどく偏っている現状を是正しなければ解決しない。
世の中は筋道どおり動いてはくれないが、正せる筋道は正すということを守らないと直っていかないのである。
そのような意味で、今回の事業仕分けについては一定の評価をしている。

なお、以前鹿島勇がいた分野(原子核物理学)は衰退の一途を辿っている。未だに大学とのつながりも少しはあるが、確かにあのようなやり方をしていては理解を得られなくても仕方ないと思うことはよくある。これからの基礎研究の発展は、象牙の塔などと自嘲せずに大学の予算も税金から出ているということを意識していくことにかかっている。

大学もカネに細かくなろうというお話。