学問の小部屋

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天ぷらそばの一般論

思い立って一般論シリーズの出張版で料理タグで書くことにした。

ラーメン発見伝」にそば信奉者の醤油製造業者がラーメンを蔑む描写がある。シンプルで醤油の味を生かすかけそばに対し、ラーメンは醤油味を台無しにする味付けを行い麺もかん水の臭いが残るひどいものだ、というのである。
それに対し、主人公が「そばだって、本来サクサクとした食感を楽しむべき天ぷらをつゆにつけるような乱暴なことをしている」と反論している。

これは一理あるように見えて、調べてみると少し違った事情が見えてくる。
天ぷらは食感が大切、これは間違いない。よって天そばを頼むときも、天ぷらを大切にしたい場合は別皿で出すように要求する「通」もいるようである。

よくできた天ぷらはあまり衣を厚くせず、具材の歯ざわりと衣のカリカリ感を楽しめるようにべったりと衣をつけることはしない。
反対にスーパーマーケットで売られているようなものは、ボリューム感を出すためにわざと多く衣をつけている。

しかし、これを粋でないと断ずるには早いようである。
天ぷらそば用の天ぷらは元々つゆにつけることを前提につくるため、つゆを吸った衣のフワフワ感を楽しめるように、また中身が水分でべしゃっとしないように、と衣をしっかりとつけて作る。
このような場合は別盛りを要求するような輩は店主の意図を理解しない無粋な客と言える。
つまり天ぷらにこだわった天ぷらそばにも二種類あり、店側がどちらを意図しているのかを理解しないと真の味わいを求めることができないのである。比較的高価な天ぷらそばを食べるときは、店に天ぷらがどちらのスタイルなのかを聞いてみるとよいかもしれない。だわりがある店ならば、店の意図を尊重した食べ方をする方がよいだろう。

また、そういう意味ではスーパーマーケットの衣たっぷりの天ぷらも、天そばにするのに適した作り方をしていると解釈することもできる。
ただし、残念なことにスーパーマーケットで使われる揚げ油は粗悪なものが多く、鹿島勇はできるだけレンジの揚げ物モードかオーブントースターで余分な油を落としてから食べることにしている。これをやると油を落とせるだけでなくカリカリ感も復活するのでオススメである。

こだわりとマナーと商売が渾然一体となって押し寄せてくるというお話。