学問の小部屋

ここは学問の黒板です。

ある二つ以上の事象を結びつけて考えるとき、それらには相関がある、または因果関係があると言います。

多くの場合、物事の結びつきは因果関係という理解の方が簡単なので、こちらが選択されることが多いようです。しかし、その中で本当に”因果関係”という形で結論できるものがどれだけあるかはとても疑問です。
例えば、竹中平蔵氏の経済改革があってから、ここのところ結構な好景気で株価も上がっているようです。何も考えないで解釈すると、「経済改革があったから景気が回復した」ということになります。
しかし、本当に経済改革があったからなのでしょうか?
世界情勢にしろ我々の市民生活を取り巻く環境にしろ、日々めまぐるしく変わっています。その中で、例えばインターネットの普及などが寄与したと考えることもできます(バブル崩壊時にはネットなど存在せず、インターネットが市民に普及し始めたのは1995年頃から)
もしかしたらブロードバンドの普及率と日経平均株価のグラフを並べてみたら、類似点が見られるかもしれません。つまり、それは”経済改革があったから”とか”ADSLが普及したから”といった単一の理由による因果関係が結ばれるのではなく、社会全体としてネットの普及、経済改革があった後に好景気が来たという事実があるだけです。
勿論改革もネットの普及も好景気と相関はあると思われるものの、因果関係を結ぶというレベルまで確定して話をすることは、論理的とは言えません。(政治的には大いに利用されるのでしょう)

また、相関すらないのに人が因果関係を信じてしまう場合もあります。
菊池誠のWEBWEBで糾弾されている「水からの伝言」などのニセ科学はその最たるものです。

政治や経済といったものについて結果論で語り、解釈学しか成立しないのは科学的見地からは「複雑系ですから」の一言で済ませるという逃げ方もあるのでしょうが、あくまで結果論で(経済なら、改革が成功した、いや失敗したというだけで)語るしかないならそれは科学的ではないし、魅力のあるものでもありません。
おそらくその解釈学は予言能力も持たないし、市民生活にとって役に立つものではないからです。