学問の小部屋

ここは学問の黒板です。

当サイトでは、「はじめに」には明記していないポリシーがございます。

それは「世の中の市民生活の一助となるべく有用な情報を提供すること」であります。

で、市民感覚のお話です。
市民感覚というものはとても大事なもので、例えば商品がお買い得であるとか、何ができたら生活が向上するかに直結するものです。
1mあたり300万円のスピーカーケーブルを見て、「ああアホらしい」と思えるのも市民感覚でしょう。

ただし、この素朴な市民感覚には十分に気をつけなければならない部分があり、うっかりすると根拠のない似非科学や詐欺まがいの商売に引っかかることになります。
例えば「コンニャクはダイエットに効果的」といった宣伝は至る所に見られます。確かにコンニャクはカロリーが低いので、そればかり食べていればやせ細ってくるかもしれません。しかし栄養分を取らないダイエットは絶食と一緒であり、結局筋肉が痩せて代謝能力も低くなり、それによって健康になどなれるはずがありません。

市民感覚では、「核」「放射線」といったものには悪いイメージがあり、「光」「磁気」といったものにはよいイメージがあるようです。
放射線の一種であるガンマ線と可視光は波長が違うだけですし、磁場が非常に強い場所では人間は生きていけません。「遺伝子組み換え」には悪いイメージが定着していますが、遺伝子の組み変わり(人為的でないという意味)は自然界で普通に起こっています。

AV機器についてなら、より高純度の銅線を使うと音がよくなるという”常識”があります。
言うまでもなくそれは純粋な銅線を使えば”純粋な”音がするだろう、という定性的な(ここが問題)市民感覚なのであり、物理学的には意味を持ちません。
更に詳しい説明はオーディオの科学にあります。
この話題であれば、確かに銅線の純度を上げることは抵抗値を減らすという意味では全く無意味ではないです。しかし、そういったことがどの程度効果があるものかを見極めることは、市民感覚では不可能です。

発掘あるある大辞典」や「おもいっきりテレビ」のデタラメさが指摘されて久しいです。しかし未だに市民感覚では「テレビでやっていたからこれは体にいい」という域から抜け出せていないようです。
実は僕の祖母などもテレビの影響を受けやすい人でして、
「○○は体にいい」が口癖のようになっています。
結局テレビを見ても専門用語はわからないので、「取り上げられていた食品は体にいい」という情報しか得ることができないのです。(そういうことを聞くたびに僕は注意しています)
摂取するべき栄養分は人によって違いますから、一概にこれは体によい、という食品などあるわけがありません。そういうところまで及ばないのが、市民感覚です。

もうおわかりのように、市民感覚とは非常に定性的、二元的なものです。「体によい」「体に悪い」「音がよい」「音が悪い」といった判断基準しかないのであり、それだけでは有意義な市民生活を送ることはできません。

では、どうすればよいのか?・・・を書かないと、学問の小部屋ではないので、書くことにしましょう。
・マスコミを通して得られる情報はすべてスポンサーというフィルタを通して得られるものなので、スポンサーに有利な内容をテレビでやっていた場合はあまり信用しないこと。
・実験などをやっていても、安易に信用せず比較実験しているかなどをチェックして得られる情報がどの程度信用できるかどうか見極める知識、眼力をつけること。嘘を嘘と見抜けるための努力をすること。
・興味がある分野については自分で勉強して定量的な評価方法を確立すること。
例えばAVに関してはオーディオ評論家の評価などははっきり言って無意味です。本気で音質比較するならブラインドテストでないと意味がないことになるものの、雑誌で厳密にそれをすると値段と成績がメチャクチャになると思われるためされることはないのでしょう。

興味のある分野について、定性的な市民感覚から抜け出したかったら自分で努力するしかありません。
どうしても追いつかずそれができないときは、せめて専門家の意見を広く収集して「なんでよいのか、または悪いのか」について知識をつけることです。