学問の小部屋

ここは学問の黒板です。

敷地の中央にある古井戸の処置

我が家の敷地の中央部には、もはや使われていない古井戸がある。寸法は直径80センチほどのいわゆる側井戸である。困ったことに、井戸の蓋になるコンクリート製の上物が撤去されている状態で放置されていた。元々は井戸の位置に古い家屋があり、台所の位置に井戸を掘って生活用水として使っていたようである。しかし、上水道が整備されてからは井戸を使うことはなく、古い家屋を取り壊してからは井戸の上に柵板で蓋をして、井戸に人が落ちないようにしてあった。古井戸は水圧と壁の土圧による力の釣り合いによってその姿を保っているので、ほとんど水が枯れてしまい壁の土圧だけの状態となると、少しずつ壁面が崩壊していき最終的に井戸が崩壊してしまう。これを避けるためには通常土掘りをした壁面に土管やヒューム管といった堅牢な筒材を入れて側井戸とする。しかし、あろうことか我が家の井戸は深部のみヒューム管が入っているだけで、井戸の上半分は素掘りの土壁であった。 井戸を土壁のまま放置すると、周辺の樹木の根が土壁を侵食して強度を落とし、崩落の危険性を高めることになる。事実、我が家の古井戸は既に木の根の侵食が目視でわかるほどであり、さらに雨水の流入とともに落ち葉が井戸に落ち、腐敗してメタンガスを発生させているという、井戸の管理上最も危険な状態であった。
丘の上という立地上、我が家は本来井戸を掘るのに適しておらず、今回調査した古井戸もその全深は8メートル以上であった。8メートルを超える井戸は家庭用としても深井戸の部類に入る。これほど深い井戸を掘る必要があったのは、丘の上なので地下水位が低く、表層の土質は赤土粘土で8メートルほど掘らないと水が滲み出してくる砂層に当たらないからである。地元の唯一の井戸専門業者である三重県で各種井戸工事のことなら株式会社亀山鑿泉工業にお任せください。に状態を調査して頂いたところ、もし井戸を残すならば水量確保のために現状の直径を維持して整備して側井戸とする必要があるとのことであり、打ち抜き井戸のような小口径の井戸に仕立て直しても意味がないとのことであった。
井戸は非常用インフラとして効力を発揮する可能性が高いとはいえ、立地が悪すぎる上に場所も敷地の中央であるので、検討の結果古井戸を埋めることにした。
写真で井戸を埋めた結果の状態を示す。ただ埋めるだけならトラックから砂利でも流し込めば終わりである。しかし、それでは井戸内部のゴミがそのままになってしまい、本来地中深くに存在しないはずの有機物等を残してしまうと、バクテリアの繁殖状況が変化して周辺の水質にまで影響を与える可能性がある。 井戸を埋めるときは、まず井戸の底を掃除してゴミをすべてかい出す必要がある。
その上で、土中に水が通るように川砂利を詰め、表土を周辺と同じ材料で覆う。さらにこのとき、湿気が地表に上がる状態が急激に変化しないように、塩ビパイプや節を抜いた竹で井戸の息抜きをする。息抜きパイプの定番の塩ビパイプは、基本的に腐らないので半永久的にその場所に残ってしまう。しかし、竹を使うと徐々に竹が腐敗して、長期的には竹が潰れて穴が完全に塞がる。それだけの年月を経れば湿気の状態も自然な変化に織り込むことができる。以上の理由から、塩ビパイプよりも竹の方がよいと考えられる。我が家では竹を息抜きに使用した。

写真では井戸のあった部分に盛土をしている。降雨などにより徐々に土の沈み込みが起こることを考えて、井戸を埋めたあと少し盛土をするのが一般的である。しかし、表土の下は川砂利を詰めているので、盛土の沈み込みが起こってもわずかと思われる。

井戸を掘るのか埋めるのか

2011年の地震のあと、断水対策として井戸を掘る人が増えたようである。 どこでも井戸を掘れば非常用水になるわけではなく、 井戸掘りに適した土地と適さない土地がある。 最も井戸掘りに適さないのは、 我が家のような丘の上で水はけのよい土地である。 このような土地の場合、 高々10m掘った程度では雨水が浸透した表層水しか湧水しないので、 井戸を活用しようしても湧水量が少なすぎて生活用水として使えない。 昔はそんな土地でも水を確保するために掘り抜き井戸を掘ることが必須であった。 掘り抜き井戸は井戸底の空間が広いので、 地下水位x井戸面積の分の貯水タンクとして機能する。 しかし、湧水量が少ない土地の打ち抜き井戸の場合、 タンク容量を使い切るとまた水が溜まるまでにひどく時間がかかる。 一度にバケツ数杯分程度の水しか出ないのでは、 せいぜい植栽の水やり程度にしか使えない。
水量を求めて丘の上でも水脈を掘り当てて深層水を利用するには、 多くの場合100m以上の深井戸にする必要があり、 業務用に大量に水を使うのでなければ井戸掘り費用が高価すぎて不可能である。 丘の上の土地で古井戸を見つけたときは、十中八九埋める方がよいといえる。
逆に最も井戸掘りに適した土地は、山のふもとの平野と山地の境目(滝線)である。 地下水位によっては、穴を掘るだけで自噴井戸となる可能性もある。 この場合はポンプすら必要ない。