学問の小部屋

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お茶漬けをおいしく食べる方法

このところご飯ものについて少し追求している。
丼ものはまた別の機会として、今回はお茶漬けについて。

お茶漬けの素などを使わずに自分ですべて用意する場合は下に書くとして、まずは市販の素を使った場合を考える。

まずご飯を茶碗、またはお椀によそい、お茶漬けの素をふりかけておく。
元々の海苔茶漬けはかなり塩味を強めに作ってあるのに対して、その他の香りはあまり充実しているとは言えない。そこで、うな茶を参考に鰹だしの素をほんの少しふりかけてやって、更に粉鰹を一掴みまぶしてやる。この時点でもだしの風味が追加され、ただのお茶漬けとは一線を画す一品に仕上がるもののもう一声。
実は、永谷園の海苔茶漬けの素に足りない香りは、「海苔」の香りである。
素に入っている海苔の分量ではお茶と塩味に負けてしまって磯海苔の香りが消えてしまっているので、ここにもみのり、または刻み海苔をたっぷりと振りかけ、一気に熱湯をたっぷりと注ぐ。
熱々のごはんに熱湯を注ぐとなかなか冷めずに食べるのが大変なので、猫舌ならばご飯はある程度さましてからお湯を注ぐとよい。ただしお湯は熱湯に限る。これには、風味を沸き立たせるのとお椀の中の対流を激しくして塩味が均等に馴染むように仕立てる意味がある。

お好みで三つ葉や山葵を入れるのもよい。しかし、わさびは水に溶かすと極端に風味を損ねてしまうので、よほど気を遣ったわさび茶漬けか新鮮なものを多めに使うかしないとただなんとなくピリピリして胸が詰まる感じになるだけなので注意である。

もっと本格的にお茶漬けを作るならば、やはり素を使わずに自分ですべて作ることになる。
ご飯は多少硬めに炊いてある方がサラサラと食べられてよい。具はお新香、梅干などでもよいがやはり海苔茶漬けを基本に考えよう。
基本のもみのりはご飯が隠れるほどたっぷりとまぶしてやる。これはその他のお茶漬けバリエーションを考えた場合も、殆どの場合に基本となる。
お茶漬けの素に入っているあられは香ばしい香りを出すのに大きなファクターとなるので、これの代わりとして勿論あられを使ってもよいがあのような適度な大きさのあられはあまり売っていない。そこで代用として、揚げ玉(天かす)を少量振りかけてやる。
更に桜海老、粉鰹を振りかける。三つ葉があればなおよい。普通の家庭だと、三つ葉をお茶漬けのためだけにストックするのは難しいのでこれはなくても構わない。
さてこれにかけるだし入りのお茶は、鰹節からダシを取ってやるときはかなり濃い目のだしを取ってやる。だしの素を使ってもよい。お茶は、緑茶を淹れるときは60℃が最適なので熱湯を用意することができないためご飯は炊きたての熱々を使う。(少し硬めにするのは最初に書いたとおり)
お茶は時間をかけてよく葉を開いてやって、十分煮出してやる。

さて、ここまでやっても実は市販の素を使ったときのようなパンチの効いた味は出せない。理由は市販の素に含まれている塩分である。これは日本人の味覚がそのような濃い塩味に慣れてしまって、そちらの方がよりおいしいと考えるようになってしまったからで、本来のお茶漬けからは外れた味覚が主流になってきている。(それが悪いとは言わない)
このような塩味を追加してやるには梅干などの塩辛いものを使うか、そのまま塩をふりかけてやってもよい。
しかし、せっかく自分でダシとお茶を用意したのだから、たまには塩分の少ないダシの香りを味わってみることをお勧めする。塩味のきいたお茶漬けは素を使えばすぐに食べられる。
だしの効いた薄味のお茶漬けの食の美は、おそらく日本人しか知らない芸術品である。

鹿島勇の下宿の定番お茶漬けバリエーションとしてうに茶漬けがある。
上記の基本の海苔茶漬けに加えて海胆を加えてやる。
生うには当然高すぎて食卓に上らないので、塩漬け、またはアルコール漬けの海胆をよく使う。塩ウニはそのままでも使えるものの、アルコールウニについては独特の臭みが出てしまうのでなるべく使わない。もし使う場合は、必ず熱湯を直接ウニにかけるようにしてアルコール分を飛ばしてやる。また、ウニのねちっとした臭みが舌に残るようになるので山葵でさわやかな香りを追加してやる。ウニを多くすればそれだけ贅沢な一品になるものの、臭みも増加するので山葵も多くなってしまう。そうすれば当然辛みも増してしまう。この配分は難しく、経験が物を言う世界である。このような贅沢な食べ方をするときは、やはり塩ウニが必須である。


さて、お茶漬けについて書いていたら自分でもまた食べたくなってきた。
ダシだけは素を使って、海苔茶漬けを用意することにしよう。