導電塗料探索
現在研究中の内容で、一般にも役に立ちそうな知見が得られたのでメモを残しておく。
絶縁体に電流を流したい場合や、EMC対策(電磁波シールド)が必要な場合、電気伝導性のある塗料が求められる。
絶縁体に厚めの金属メッキができれば何の問題もない。そうでない場合は表面に導電性塗料を塗布することになる。
そこで、導電塗料として使える身近な材料を洗い出した。
EMC対策用として市販されているニッケル系エアゾール塗料(例えばマックコーポレーションのMAC-115)は、表面低効率が3Ω/sq.以下と比較的低い値を示す。この値はアルミや銅などの金属良導体よりは数桁高いが、EMC対策には十分である。
ところが、このようなスプレーの値段は420mlで数千円ほどであり、非常に高価である。個人使用するには高価すぎて、湯水のようには使えない。
また、時々話題に上がる金属光沢スプレーには導電性のある製品は少ないようである。金属光沢を出すために必要な金属粉は、導電性を持たせるよりもはるかに少なくて済むためでる。
導電塗料を探索していた当初は、素材の抵抗率から考えて金属塗料である必要があると考えていた。ところが、一般に絶縁材を導電素材として使用するとき、むしろ炭素を練りこむことが多いことがわかった。この理由は材料費と加工性の問題と思われる。炭素は材料物性としては金属よりも抵抗率が格段に高いが、多量に使えば抵抗値を下げられる。
身近にある炭素系塗料といえば、墨汁である。墨汁であれば100円ショップでも手に入る。
実際に絶縁布にEMCスプレーと墨汁を十分に塗って抵抗値を評価したところ、1mmの距離での抵抗値はそれぞれ50Ω程度と500Ω程度であった。この程度の抵抗値ならばいずれもEMC対策には使用できる。また、墨汁は厚塗りが容易なのでもう少し抵抗値を下げることも可能と考えられる。
すなわち、単に電気伝導性をよくするためには墨汁の使用が有用である。
簡易静電マットなどに適用できるのではないであろうか。
(追記)その後様々なやり方を検討したところ、カーボンファイバーが金属の10倍程度の抵抗率で優秀であり、高価なことを除けばマットのように柔軟性を持たせる場合には理想的であるとわかった。次点は墨汁にアルミ粉末を混合する手法であった。